2017年10月25日

『BOX ~箱の中に何かいる~ 』3巻あらすじ&読後感想

諸星大二郎『BOX ~箱の中に何かいる~』3巻を読みました。今回で完結!

BOX〜箱の中に何かいる〜(3) (モーニングコミックス)
BOX〜箱の中に何かいる〜(3) (モーニングコミックス)


・・・あらすじ・・・

上がっているかと思うと下がっている「エッシャーの階段」と、遠近感を狂わせるトリックに満ちた「錯視の塔」が次のステージ。
モンスター化した甲田に追われながらも興子はパズルをクリア。
ナビゲーターの魔少女を罠に嵌めてプレイヤーに仕立て、自分たちと一蓮托生の運命にひきずりこむ。
塔の下から現れた最終ステージは巨大な「箱」そのもの。
魔少女はメンバーの誰かにみなを裏切らせてゲームを不成立にさせようともくろむが、興子によって自滅に追い込まれる。
残る興子と光二、惠、神宮の結束は固く、そろって「箱」に要求されたものを与える決断をした。
無事、外に出ることができた4人。
「箱」の中にいるものに自分の一部を与えたことにより、世界は以前と変わっている。
だが戻ってきた4人は、世界の何がどう変わったのかさえわからない。
ただ、それぞれに確かな喪失感と違和感を抱えながら、普通の暮らしに戻っていくのだった。
甲田と山内は「行方不明」。谷夫婦は最初から「存在しなかった」。
「すべて世はこともなし」


↓ここから読後感想(ネタバレ)↓

最終ステージに立ったメンバーに箱が要求したものは、各自が「これさえなければ」という願望を抱いていた対象でした。
光二にとっては死別した兄の存在。惠にとっては男性性。神宮にとっては霊感。興子さんについては(喪失願望があったかどうかわかりませんが)度を越した好奇心。
それらは神宮が「ここに集まった人たちってみんな訳ありですよね」と言った「訳」の部分であり、業と呼んでもいいものでした。
作品として見るなら、それぞれのキャラを立たせていた要素です。

なんにでも興味津々の興子さんは、ギリシャ神話で好奇心に駆られ禁断の箱を開けたパンドラを、徹底したトリックスターに変換したキャラ。
そんな興子さんに導かれて開いた「箱」はいうなれば日本版パンドラの箱。
とすると、最後に出て来た「物凄いもの」は「希望」とも読めます。

「希望」が人を誘い込み、惑わして、各人が背に負い、その重さをかこってはいても、その人をその人たらしめていた荷物を搾取する。
「希望」に利用されたあとの人間には喪失感と、平穏だが見るべきところもない人生が待っている・・・

各人が願望をかなえられてよかったじゃん、と単純には思えない灰色エンドでした。
世界というひとつのパズルは完成しているのだけど、個々のピースの形が知らないうちに変えられてしまった。
それが結局は「こともなし」になってしまう、ということへの無常感。

最近できた政党の名前を思うと、物語の時事性にもびっくり。
すぐれた作品は作者の意図するしないに関わらず、時代と共鳴するものですね。

諸星作品は漫画で読めればそれで大満足なのですが、この作品に関しては質のいい3Dアニメで観てみたいな。錯視が現実化するところとか。


3巻でわたしのお気に入りは次のみっつのシーン。

・いちずな山内
・けなげな神宮
・おちつけ光二

そうそう、自称ナビゲーターの少女の正体は、箱の内部に寄生して、人間が裏切り合ったり愚行に走るさまを見て楽しむ「通り悪魔」でした。
イソウロウグモみたいな悪魔ですね〜
魔少女VS興子さんの最終局面は、囚人ゲーム理論も入っていておもしろかったです。


余談ですが諸星作品の短編『悪魔の煤けた相棒』(『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』所収)に出てくる悪魔のほうは、出番がちょっぴりだけなのが惜しい、いい感じのキャラ。
主人公は悪魔の「煤けた相棒」である男ですが、この男、7年のあいだ髪をくしけずらず体を洗わず・・・
『ロードオブザリング』のアラゴルン、『アナと雪の女王』のハンスクリストフと並んで、わたしの中の三大「におうイケメン」です。
みんな、やることがサラッとかっこいいし、映像やアニメや漫画ではにおいがわからんので気にならないですが、じっさい側にいたら、そりゃもう、くさいんだろうなあ^^

瓜子姫の夜・シンデレラの朝 (朝日コミック文庫)
瓜子姫の夜・シンデレラの朝 (朝日コミック文庫)





posted by まさの at 19:23 | 漫画

2017年04月30日

『BOX ~箱の中に何かいる~ 』2巻あらすじ&読後感想


※あらすじ・感想とも、ネタバレしています。ご注意下さい※

楽しみにしていた諸星大二郎の『BOX ~箱の中に何かいる~』2巻が発売されました。
掲載誌は読まずにがまんしているので、単行本でまとめて読める喜びはひとしお。
1巻に負けず劣らずおもしろかったです!

BOX~箱の中に何かいる~(2) (モーニング KC)
BOX~箱の中に何かいる~(2) (モーニング KC)

・・・あらすじ・・・

憶病さから「箱」の定めたルールを破ってしまい、異形の生き物に変えられた山内。
自分たちの意志でゲームを下り、安らかに「箱」に取り込まれた谷夫妻。
狡猾な甲田は自分のプレイヤーの権利を興子に押し付けるが、それがルール違反と見なされて人外の姿に。
狂暴化した甲田に追われながら、次のステージを目指す光二、惠、神宮、興子。
ときに喧嘩し、ときに力を合わせて進むうち、四人の間には連帯感が生まれていく。
彼らは全員揃ってゲームをクリアし、無事に外に出ることができるのか。
案内役の少女のみが知る、「箱」の奥で待っている「あれ」とは、どんな存在なのか。
新たな扉の向こうに現れた階段。その通じる先は・・・。


↓ここから読後感想(ネタバレ)↓

霊感少女の神宮が看破したように、訳ありの人間ばかりが集められたデス・ゲーム。
現実世界に居場所を失っていた谷夫妻が「箱」に埋もれてゆく場面は、諸星作品の中でも屈指の切ない別れだと思います。
自分は体は男、心が女の性同一性障害だと光二に告白する惠(やはり女子であったか)。
そんな惠に惹かれ始め、戸惑う光二(かわいい)。
二人の距離感に嫉妬して、拗ねる神宮(来ました三角関係)。
とにかくいつでも事態をまぜっかえす興子(トリックスター)。
とても生死のかかったゲームの最中とは思えないほどほっこりしたチームです。
普通の人間かどうかも怪しい興子さんは別として、若い3人は、それぞれ人としてまっとうで、本当にいい子たち。
諸星作品に出て来るまっとうな青少年の好感度の高さは、英ITVドラマ『刑事フォイル』のフォイルに匹敵します。
それだけに、今後もし誰かが欠けたら辛い。
光二と恵は・・・もう付き合っちゃえ!な感じのいい雰囲気。
BL要素はまさかの山内。命を落としたと思いきや、へんないきものに変えられて、最終的に甲田と合体・・・したのかな、あれは。だったら少しは浮かばれるかもしれません。

3巻の刊行予定は今年の秋だそうです。次でたぶん最終巻。
ハッピーエンドになりそうな予感はあるけど、諸星先生がどう「箱」を畳んで、あるいは開いてくるか。

楽しみでしかたありません^^

posted by まさの at 00:47 | TrackBack(0) | 漫画

2017年01月25日

『BOX〜箱の中に何かいる〜』1巻あらすじ&読後感想

※あらすじ・感想とも、若干ネタバレしています。ご注意下さい※

この冬は、諸星大二郎『BOX〜箱の中に何かいる〜』1巻、山口貴由『衛府の七忍』3巻、山岸凉子『レベレーション』2巻と、わが3大ひいき漫画家さんの新刊を立て続けに手に取ることができました。

BOX~箱の中に何かいる~(1) (モーニング KC)
BOX~箱の中に何かいる~(1) (モーニング KC)

・・・あらすじ・・・

高校2年生の光二の家に届いた、差出人不明の寄木細工の箱。
光二が箱の仕掛けを解いたとたん、次々と怪現象が起こる。
パズルを送りつけられた人々は、光二の他にもいた。
彼らの手元に届いたのは、ルービックキューブ、クロスワード、スマホにダウンロードされたゲームなど。
とある建物に引き寄せられるように集まった光二たちは、気づけばその箱めいた建物の中に閉じ込められていた。
建物の案内役をつとめる怪しい少女は、
「全員が自分のパズルを解けば、出口が現れる」
というのだが・・・。


↓ここから読後感想(ネタバレ)↓

映画『SAW』シリーズや『CUBE』でおなじみの状況限定(ソリッド・シチュエーション)ホラーも、諸星大二郎の手にかかればなんともコワおもしろい、安定の諸星ワールドに。

死んだ兄へのコンプレックスを抱えた光二の存在が名前の通り光っています。
閉じ込められたメンバーは全部で7人(+野次馬の興子さん)。おじさんも2人いるのですが、彼らを差し置いて、光二、すっかりリーダー格。
短気ですが腕っぷし強く機転が利き、男気もある光二くんなので、秀才の惠くんがポッとなるのもわかりますね^^
もしや『BOX』という作品、諸星大二郎がBLという新たな扉を開くための仕掛けなのか。
惠くんは・・・女子・・・というベタ展開もありそうなので、過剰な期待(?)は禁物ですが。
霊感があるクールな美少女・神宮も、光二を気に入っている様子。
四角い箱の中での三角関係も、おつなものという気がしますが。どうなるかなあ。

奇怪なマジックボックスに捕らわれたあるメンバーが命を落とすところなど、かなり猟奇な絵面も。ただ、謎の野次馬・興子さんのしれっと明るい言動のせいか、あんまり陰惨ではありません。

悪魔や吸血鬼が「招かれた家にしか入れない」と言われているように、魔性のものは独自のルールに縛られていることがあります。

この『BOX』で光二たちがパズルを強いられるのも、「箱」という異質な生物がなんらかの「餌」を得るために必要なルールらしい。

栞と紙魚子と夜の魚
栞と紙魚子と夜の魚

『栞と紙魚子と夜の魚』所収の「本の魚」を思い出しますね。

また、自分にとっての捨て去りたいものが変異したり欠損する描写は、

栞と紙魚子 何かが街にやって来る
栞と紙魚子 何かが街にやって来る

『栞と紙魚子 何かが街にやってくる』所収の「ゼノ奥さんのお茶」のモチーフでもありました。

諸星ワールドにおけるips細胞のようなこれらの設定が、『BOX』ではどんな構造に創りあげられていくのか気になります。
月刊モーニングtwoで連載中。

単行本派のわたしは、この春出るという2巻が待ち遠しい・・・!!

長くなったので『衛府の七忍』と『レベレーション』については記事を改めます。

posted by まさの at 16:16 | TrackBack(0) | 漫画