2017年08月22日

フランク・パヴロフ『茶色の朝』

新聞記者だったわたしの姉が
「できるだけたくさんの人にお勧めしたい」
と望んでいた、フランク・パヴロフ『茶色の朝』(大月書店)。

茶色の朝
茶色の朝

同調圧力がありふれた日常を支配していくさまを描いた寓話です。

病床から、わたしの子どもにこの本をプレゼントしてくれたとき、姉は自筆でこんなメッセージを添えていました。

「何かおかしい、何か変だと思っていることをそのままにしておくとどうなるかが書かれている本です。自分の気持ちや思いを大切にね。ぜひ読んでみてください!」

なによりこの本の推薦文にふさわしく思えましたので、子どもの了解と賛同を得て引用しました。


↓ 本の内容とは関係ありませんが ↓

Happybee57のブログ「乳がんになって
同じような病気に悩む人たちの参考になれば、との思いで、姉が始めたブログ。炎症性乳がんとの闘病の経緯を記録しています。
姉の死去後、補足の記事を遺族の手で継続UP中。


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posted by まさの at 22:07 |

2017年05月27日

小田仁二郎『触手』を読みました

うちの子どもは最近、角川つばさ文庫のシリーズものに夢中。
児童書の近くに閲覧スペースのある書店では、何時間でも飽きずに読んでいます。
親としてはすこしホロ苦い気持ちで付き添うのですが、こういう本をチェックできるのは嬉しい。

恋 川端康成・江戸川乱歩ほか (文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション)
恋 川端康成・江戸川乱歩ほか (文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション)

小田仁二郎の『鯉の巴』という異類婚ものの皮膚感覚がとてもよかったです。
ジュニア向けの短編集にこれを持ってきた編者はどなたかと見れば、さすがの東雅夫さん。
他の作品にも興味が湧いて、『小田仁二郎作品集 触手』(深夜叢書社。画像見つからず)を図書館でリクエストし、読んでみました。


所収作品は、表題作にして代表作の『触手』のほか『にせあぽりあ』、『メルヘンからかさ神』(第一話:鯉の巴 第二話:からかさ神 第三話:渇き 第四話:仙人の腹)、『昆虫系(一九三・・・年)』、『写楽』、『北斎最後の事件』、『蚤芝居』。

瀬戸内寂聴に影響を与えた作家さんだったんですね。

ひとに見えないものが見え、創作の狂気に憑かれた挙句に死んでゆく絵師を描いた『写楽』
ノミの進化に寄せる温かい目と、獄中の罪人たちの運命に向ける冷めた描写が対照的な『蚤芝居』

の二篇が読みやすかったです。

『メルヘン からかさ神』の四話の中では、やはり『鯉の巴』が抜群。
どの話にも「メルヘン」な匙加減を感じないことにツッコミたくなりますが…

『触手』『にせあぽりあ』など長めの作品は、畳みかけるような一人称の語りが特徴的。
自分の内面や、フェティッシュを感じるものについて、ものすごい粘度で描写して、描写して、描写する。
ちなみに『触手』のフェチ対象は、女性の下のお毛け。
エロチックになりそうなものですが、あまりにこだわり続けるがために、かえってストイックな印象に。

緻密に描き出すことで対象を解体していく文章を読んでいたら、ふとウラジミール・ソローキンの『ロマン』を思い出しました。

ロマン〈1〉 (文学の冒険)
ロマン〈1〉 (文学の冒険)
途中までは、ふつうに面白いロシア文学の体。
人間性に溢れた豊かな物語は、突如破綻し、登場人物が、小説そのものが、文字通りばらばらになってゆきます。読後はしばし、あ然ぼう然。
文章で構築される世界を、その世界を信じる読者を、容赦なくぶった斬る通り魔のような本。

どちらの作家も「こだわること」「すっぱり斬り落とすこと」を作品の中で両立しているのがすごいです。
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posted by まさの at 00:14 |

2017年03月02日

『ゴッド・スパイダー』読後感想

気圧のせいか、昨日は一日中、ぐるぐるめまい。
ましになった今日も、午後から外せない用事があるので、午前中の里山活動はお休みしました。
ああ、ざんねん。

すこし前に読んだ本のご紹介を。

ゴッド・スパイダー
ゴッド・スパイダー

・あらすじ・
主人公・日々野は研究者。人工クモ糸の量産化研究にすべてを賭ける日々だが、大学時代からの友人・片桐に先を越され、絶望する。いっぽう片桐の会社では、研究データの入ったパソコンが何者かにハッキングされ、国際的サイバー犯罪者集団の関与が疑われる。そのスクープを追う新聞記者・広瀬。広瀬の妻は大のクモ好き理系女子だが、最近、奇妙な行動を取るようになっていた・・・。


感想(ネタバレしています。未読のかたはご注意下さい!)

↓  ↓  ↓


扱うネタが人工クモ糸に生物模倣、登場人物にクモ好き女子・・・とあっては、読まないわけにはいきません。冬の間はクモもキノコも常に脳内供給不足ですから^^

ミステリ重視かと思いきや、理系研究者たちの熱くも爽やかな友情の物語でした。
日本のネット社会のサイバー防衛の遅れについて、警鐘を鳴らす本でもありました。
わたしは理系でもないしパソコン用語に詳しくもありませんが、専門用語は砕いて説明してくれているので、読みやすかったです。
悪の黒幕的な存在は、直接的には描かれません。
対決のカタルシスのないのが読後すこし食い足りない気がしました。
ですが、この『ゴッド・スパイダー』という作品自体が、主の姿の見えないネット、クモの巣をイメージしたものだったなら(作中作の『Spider web diary』のように)イメージ通りです。
時系列が過去と現在を行ったり来たりするのも、クモが営巣で糸を張るとき行ったり来たりする様子になぞらえているのかもしれません。
日本独特の特許制度を逆手に取った片桐のリスクマネジメント能力がキラリと光り、日々野の後輩・黒石や、広瀬の同僚・東海林たち脇役のワイワイガヤガヤが、終始楽しい。

浦沢直樹の絵柄で漫画化したら合いそうだなあ^^


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posted by まさの at 11:55 | TrackBack(0) |