2017年04月30日

『BOX ~箱の中に何かいる~ 』2巻あらすじ&読後感想


※あらすじ・感想とも、ネタバレしています。ご注意下さい※

楽しみにしていた諸星大二郎の『BOX ~箱の中に何かいる~』2巻が発売されました。
掲載誌は読まずにがまんしているので、単行本でまとめて読める喜びはひとしお。
1巻に負けず劣らずおもしろかったです!

BOX~箱の中に何かいる~(2) (モーニング KC)
BOX~箱の中に何かいる~(2) (モーニング KC)

・・・あらすじ・・・

憶病さから「箱」の定めたルールを破ってしまい、異形の生き物に変えられた山内。
自分たちの意志でゲームを下り、安らかに「箱」に取り込まれた谷夫妻。
狡猾な甲田は自分のプレイヤーの権利を興子に押し付けるが、それがルール違反と見なされて人外の姿に。
狂暴化した甲田に追われながら、次のステージを目指す光二、惠、神宮、興子。
ときに喧嘩し、ときに力を合わせて進むうち、四人の間には連帯感が生まれていく。
彼らは全員揃ってゲームをクリアし、無事に外に出ることができるのか。
案内役の少女のみが知る、「箱」の奥で待っている「あれ」とは、どんな存在なのか。
新たな扉の向こうに現れた階段。その通じる先は・・・。


↓ここから読後感想(ネタバレ)↓

霊感少女の神宮が看破したように、訳ありの人間ばかりが集められたデス・ゲーム。
現実世界に居場所を失っていた谷夫妻が「箱」に埋もれてゆく場面は、諸星作品の中でも屈指の切ない別れだと思います。
自分は体は男、心が女の性同一性障害だと光二に告白する惠(やはり女子であったか)。
そんな惠に惹かれ始め、戸惑う光二(かわいい)。
二人の距離感に嫉妬して、拗ねる神宮(来ました三角関係)。
とにかくいつでも事態をまぜっかえす興子(トリックスター)。
とても生死のかかったゲームの最中とは思えないほどほっこりしたチームです。
普通の人間かどうかも怪しい興子さんは別として、若い3人は、それぞれ人としてまっとうで、本当にいい子たち。
諸星作品に出て来るまっとうな青少年の好感度の高さは、英ITVドラマ『刑事フォイル』のフォイルに匹敵します。
それだけに、今後もし誰かが欠けたら辛い。
光二と恵は・・・もう付き合っちゃえ!な感じのいい雰囲気。
BL要素はまさかの山内。命を落としたと思いきや、へんないきものに変えられて、最終的に甲田と合体・・・したのかな、あれは。だったら少しは浮かばれるかもしれません。

3巻の刊行予定は今年の秋だそうです。次でたぶん最終巻。
ハッピーエンドになりそうな予感はあるけど、諸星先生がどう「箱」を畳んで、あるいは開いてくるか。

楽しみでしかたありません^^

posted by まさの at 00:47 | TrackBack(0) | 漫画

2017年04月26日

『メグレと深夜の十字路』

わたしの大好きな俳優のトム・ヴラシアさん。

出演作がなかなか日本で公開されないのが悩みですが、こんど
英ITVのテレビドラマ『メグレ警視』
シーズン2 "Maigret's Night at the Crossroads"
(ドラマでのこの話の邦題はまだ不明。原作邦題は『メグレと深夜の十字路』)に出演されるので、とても嬉しいです^^

ドラマの原作は、ベルギー人作家シムノンによるミステリー小説。
主人公はフランスの警視メグレで、原作もシリーズになっています。
過去にもドラマ化されていますが、今回の主演は『Mr.ビーン』のローワン・アトキンソン。
『Mr.ビーン』は若い頃お友達に「最高だから観て!」とDVDを貸してもらいました。笑いのツボが違ってわたしはハマれなかったけど、強烈な印象が残っています。
今回のメグレでは、ローワンさん、シリアスな演技がとても好評みたい。

気になるトムさんが演じるのは Carl Anderson という男。
隻眼のベルギー人貴族で、とある奇妙な殺人事件の容疑者。重要な役どころです。
ご本人のインスタグラムに、顔半分に特殊メイクを施したときの写真があって、実に絵になる迫力でした。
トムさんならタニス・リー『平たい地球シリーズ』の狂気の君チャズを演じられる!と確信する身としては、この配役を決めた監督(なのかな?)に同志を見た気分。

日本での公開はAXNミステリーで。
シーズン1(全2話)の初回放映は終わってしまいましたが、5月4日の夜に1話が放映される模様。
シーズン2の"Maigret's Night at the Crossroads"が放映されるのはまだ先でしょうが、観られる環境にある方は、シーズン1から要チェックかも。
『刑事フォイル』のプロデューサーや『名探偵ポワロ』『ミス・マープル』の脚本家といった制作陣が手がけるドラマなので、ハズレなさそうです。

メグレと深夜の十字路
メグレと深夜の十字路

原作が気になるので図書館で『メグレと深夜の十字路』(河出書房新社)を借りました。
画像リンクサイトとのアクセスが悪く、画像なしですみません。
メグレシリーズは『メグレと殺人者たち』しか読んだことがなかったなあ。
今は古本か電子書籍しかないようです。

邦訳ではCarl Andresen はカール・アナセンとなっていました。
「三寡婦の家」と呼ばれるいわくつきの家に住む謎めいた外国人兄妹、さらに謎めいた殺人・・・
ドラマチックな展開のはずなのになぜか地味というか淡泊なのは筆致のせいでしょうか。
勤勉実直なメグレが鋭い観察眼と冷静な判断で事件を解決していきます。
ラストはちょっとポワロの『ヘラクレスの難業』を彷彿とさせました。
ドラマでは変わる挿話もあるでしょうが、原作邦訳を読んだ限りカールは怪我ばかりしているので、トムさんファンとしては楽しみ心配です。

『クロッシング・ライン 3』のDVD化を待っているところに、またひとつ、待つ作品ができました^^ 

トムさんは2017年カンヌ映画祭の短編部門の審査員もされています。Super!
短編の映像作品に興味のある方は、Nespresso「TALENTS 2017」から見られます。
わたしは心の目と耳でだいたいの雰囲気を楽しんでいます(笑)




posted by まさの at 20:51 | TrackBack(0) | 映画・ドラマ

2017年04月16日

『マタイ受難曲』あれこれ

小学生のころ、合唱団に入っていました。
合同演奏会というのがあって、どこかの合唱団が『嘆きつ奥津城(おくつき)に』という歌を歌いました。
なんだかすごい歌があるんだなあ、と驚いたのを覚えています。
歌った合唱団の名前も、歌詞が何語だったのかも忘れてしまいましたが、タイトルだけは、大人になってからも忘れられませんでした。

ある日クラシック好きの父と話していて、ふとこのタイトルのことを口にすると、

「それはバッハの『マタイ受難曲』最終合唱だろう」

と、カール・リヒター指揮によるバッハ『マタイ受難曲』抜粋のテープを貸してくれたのです。

意外なときに意外な人から(父ごめん)むかし惹かれた歌との再会を果たさせてもらったのでした。

その後、カール・リヒター版の全曲録音を聴きました。

『マタイ受難曲』はイエスの受難を描いた宗教音楽のひとつで、バッハの作曲によるものが有名。
十字架刑で死んだイエスを悼む場面が、終曲の最終合唱です。
今は『嘆きつ奥津城に』とは呼ばず、シンプルに『第68曲 合唱』というようです。

宗教音楽といっても、全編を通じて「キリスト教バンザイ!」という調子ではありません。
愛する者の安らかな眠りを願いながら生前の苦悩をしのび、その苦悩を自分のものとして抱いていこうとする静かな決意が、心の深いところに触れてきます。

いちどは生演奏で聴きたいと思っていた『マタイ受難曲』。
バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)(※音声が出るサイト)の公演があると知り、行って来ました。
指揮者はBCJ主催の鈴木雅明。
会場は初台のオペラシティで、席は1階の28列でした。
全曲演奏のため、第1部と第2部の間に休憩を挟み、18:30から3時間以上の長丁場。
ドイツ文化に詳しい編集者のMさんが付き合ってくれました。

リヒター版のように最初の合唱から盛り上がるのを予想していたら、ゆったりと抑えたトーンの、端正なマタイでした。
ふだんクラシックを聴かないド素人のわたしは、同じ曲が指揮者によってこうも印象が違うのか、とびっくり。
ソプラノのハンナ・モリスン、アルトパートを歌うカウンターテナーのロビン・ブレイズの声は後ろの席までばっちり届き、バスの加耒徹によるペテロの3回の否認、ピラトの妻の台詞を歌ったソプラノの女性の声もよく聞こえました。
特にロビン・ブレイズの『アリア 第6曲』、悔悛と悔恨を歌いあげる高く澄んだ声がすばらしく、骨から洗われるような感じがしました。

『第68曲 合唱』が終わったときは22時近く。
久々に会ったMさんと初台の駅で長い立ち話をした後、これまた久々の満員電車で帰宅しました。

今回、演奏を鑑賞するためにひもといた本などを以下にご紹介。

マタイ受難曲
マタイ受難曲
(著:磯山雅)

ひとつひとつの曲について、前後の曲との関連性や背景についての丁寧な解説があり、作品の枠組みを理解するのを助けてくれます。
キリスト者のルイスが『ナルニア国物語』を、遠藤周作が『沈黙』を書いたように、バッハは自分の信仰と神についての思索を『マタイ受難曲』に注ぎ込んだのだ、ということが、この本を読んでわかりました。
バッハは ♯ 記号を十字架とみなして作曲したらしい、などトリビア的な知識も面白かったです。
巻末に『マタイ受難曲』全歌詞(ドイツ語&日本語訳)がついているのもありがたい。

残念ながら版元に在庫なしとのことですが、中古でも手に入れたい一冊。


CDブック NHK 新ドイツ語入門
CDブック NHK 新ドイツ語入門
著:相澤啓一

火星人のピポとドイツ人の女の子ティナの交流を描いたドイツ語教本。
文法、基本単語、会話など、すべての要素が1冊にぎゅっと詰まっていて、第50課まであります。
元はNHKのテレビで放映されていた番組をもとにつくられた本。
著者がこちらで放映時の画像をアップして下さっているので、かわいいピポとティナのパペットアニメーションも視聴可能です。

この本を一課終えてはマタイを聴き・・・の繰り返しで、現在も勉強中。


駈込み訴え
駈込み訴え
著:太宰治

イギリスではイースターに「シムネルケーキ」というマジパン入りフルーツケーキを作る風習があるそうですが、ケーキの上に乗せるマジパンの飾りは11個。なぜ11かというと、イエスの12人の弟子から、ユダを引いた数なのだそうです。
13という数字が不吉なのも、最後の晩餐でイエスを含む13人が食卓についたとき、ユダが13番目の席に座ったからだ、という説が元だとか。

そんな嫌われ者の代名詞のようなユダを、妄執めいた愛の反動でイエスを売る悲しい男として描いた、ユダの一人称小説。
青空文庫でも読めます。

そんなこんな、いろいろな扉を開いてくれたマタイ受難曲。
今後も機会があれば公演に足を運びたいと思います^^

タグ: 音楽会

posted by まさの at 23:39 | TrackBack(0) | 展覧会・音楽会