2016年01月31日

名探偵ポワロ『ヘラクレスの難業』観ました

放映時間に正座待機して観ました^^
お目当てのトム・ヴラシア演じる保険調査員シュワルツが、とてもおいしい役どころで、大満足でした。

そのあと、副音声で観なおしたり、気になったことを調べたり、今年はじめての里山作業の落ち葉かきで筋肉痛になったり、お友だち二人をお誘いして目白を再訪したりしていたので、レビューが今日になってしまいました。

下記、シュワルツの立場をひいきした映画のレビューを。
ドラマのストーリー展開・犯人など、ネタバレ全開です。OKの方のみご覧下さい。

↓↓ ここからネタバレ ↓↓

ロンドンでの囮捜査中、国際的窃盗犯・マラスコーに出しぬかれたポワロ。
宝石と絵画を奪われた上、身の安全を保障した囮の女性まで殺され、引きこもりになるほど落ち込みます。
自信を取り戻すために無償で人探しの仕事を引き受け、探し人がいるはずのスイスのホテル・オリュンポスへ。
ホテルに向かうポワロは、現在ここがICPCの捜査網の中であること、目指すホテルはマラスコーの窃盗品の隠し場所であることを知らされます。
身分を隠してホテルに潜入しているドゥルエ警部を見つけ出し、接触するよう言われるポワロ。
警官の変装なら見破れる、と、早くも自信満々です。
到着したホテルは怪しい人物だらけ。しかも突然の雪崩でホテルは陸の孤島に。
さまざまな思惑の交錯するホテルの中、ポワロはついに、死んだとされていた探し人を見つけ出し、窃盗品のありかや、マラスコーの正体をも突き留めます。

登場するあやしい人リスト ( )内は正体

・メモ魔でなれなれしい保険調査員、シュワルツ(ドゥルエ警部)。
・ロンドンの囮捜査の現場にもいた外交官次官、ウェアリング。
・DV夫(架空)に悩む娘エルシーとその母(詐欺師の姉妹)。
・ポワロと旧知の犯罪者ロサコフ伯爵夫人と、その娘で犯罪学者のアリス(マラスコー)。
・療養中のバレリーナ、カトリーナ(ポワロの探し人)と、その主治医ルッツ(マラスコーの相棒)。
・拝金主義のホテルのマネージャー、フランチェスコ(ドクターの肩書は詐称)。
・給仕慣れしていない給仕のグスタフ(マラスコーの手先)。


はじめポワロは、グスタフが潜入中の警部だと思い、名前で呼びかけます。
ところが実はグスタフはマラスコー側の潜入者。ポワロの勘違いを利用してドゥルエ警部に成りすまし、ポワロの肚を探るのでした。
そうとは知らないのが本物の警部。
彼の世を忍ぶ仮の姿は、保険調査員・シュワルツ(ドイツ語でSchwarz=「黒」。意味ありげな偽名ですが、もしかして単に色黒だから?)です。
彼はポワロに近づいては、自分の正体をほのめかします。
でも、まさかドゥルエが他にいるとは思わないポワロに、超うるさそうにあしらわれるのであった。

ポワロにボッティチェリ(名前当てゲーム)を仕掛けて「I am “D”(わたしは“D”です)」と言ってみたり、晩餐の席に割り込んで、自分の行動記録のメモを見せてみたり。さりげない、しかし涙ぐましい、そしてことごとくスルーされる、ドゥルエの努力が不憫です。
彼が自分の行動記録をメモしまくっていたのは、保険調査員らしい行動を装いつつ、自分に万一のことがあったとき警察が参考にできるものを残す、という意図もあったのでしょう。
ある夜グスタフに襲われたポワロを助け、ようやく彼は自分がドゥルエだと名乗りをあげることができたのでした。良かったよかった。

副音声ではポワロがドゥルエの名乗りを聞いて「Of course you are.(もちろん、あなたでしょうとも)」と言うので、晩餐のとき、名刺かメモに自分の正体を書いて見せたのかな?とも思いましたが・・・
グスタフ襲撃から守ってもらった瞬間にはポワロは彼を「シュワルツ!」と呼んでいたので、Of courseうんぬんは、ポワロ独特の負けず嫌い発言なのかもしれません。名刺やメモに書いてしまったら、ポワロと同席している一般人(伯爵夫人)に見られる可能性もありそうだし。

それにしても、グスタフを警部と間違えたポワロのうっかりぶりに、ちっともこだわらない警部は実に漢ですねえ。
ポワロは、警部にもっときちんとあやまらなくちゃいけないと思いますよ!
ボッティチェリゲームを仕掛けたのに放置される場面は、妙にくつろいだバスローブ姿のせいもあって、何度観ても気の毒な警部なのです。

マラスコーは、ギリシャ神話のヘラクレス12の難業をテーマとする連作絵画を盗むのですが、ドラマに登場する絵は『ヘラクレスのヒドラ退治』のみ。
ヒドラは頭が9つある水蛇です。
なぜ12の難業の中からこれが取り上げられたのでしょう。
キリスト教文化圏では狡猾さの象徴である蛇と、ホテルに集った人びとが皆なにかを偽っていたことをかけていたのかもしれません。
人数も、ポワロとドゥルエを除くと9人です(ウェアリング、詐欺師姉妹、ロサコフ伯爵夫人とアリス、カトリーナとルッツ、フランチェスコ、グスタフ)。
調査のためとはいえ身分を偽っていたドゥルエを加算すると10人になりますが、ポワロのサロンでの謎解き=ヘラクレスのヒドラ退治と見るなら、すでに自殺したグスタフを除く9人、という考え方もありかも。

惚れた弱みで女詐欺師を庇うウェアリングを、英雄気取りの自己満足で痛い目に遭わないよう、たしなめるポワロ。ですが最後は、マラスコー本人から同じことを指摘されてしまいました。
伯爵夫人の愛娘を警察の手に渡すことで、愛する伯爵夫人とも訣別せざるを得ないポワロ。
伯爵夫人から贈られたカフスボタンは、彼女にとっては地位やお金を失っても失わなかった感性(my taste)の証。
ポワロにとっては、正義を見失わないために失った愛の、苦い記念品。
ラスト、再会した恋人同士の姿に微笑みつつ、カフスボタンにそっと指を触れるポワロの仕草が、切なく胸に迫ります。

そうそう。
ドゥルエ警部属する組織、ICPC。
聞き慣れない略語なので調べたら、現在のICPO=国際刑事警察機構(通称インターポール)の前身でした。
ポワロは第一次大戦後にベルギーからイギリスに亡命した設定です。
ICPCの本部は当初ウィーンにありましたが、1938年にオーストリアがドイツに併合されたため、ベルリンに移動しています。
恐らく、このドラマの時代にはすでに、ナチの影響が濃い組織だったのではないでしょうか。
ルッツやシュワルツが行う、踵を派手に鳴らす敬礼動作は、「靴」に意識を向けさせるための演出でしょうが、ナチの軍靴の響きにも重ねられているのかな、と思ったりします。

以上、長くなりましたが、『ヘラクレスの難業』、シュワルツことドゥルエ警部に偏った視点からのレビューでした(ドゥルエってフランス系の名前ですよね。ドイツっぽい仮名もふるまいも、人種まで隠すための演技だったのかと思うと、やはり警部はできる男・・・)。

読んで下さってありがとうございました!

わたしからのお願いメールでドラマを観たり、録画予約してくれた皆さま、このブログで興味を持ってチェックして下さった皆さまも、ありがとうございました。
モナミ!と呼ばせていただきたいです^^






posted by まさの at 18:31 | TrackBack(0) | 映画・ドラマ

2016年01月26日

ドラマ名探偵ポワロ『ヘラクレスの難業』

ドラマ名探偵ポワロ『ヘラクレスの難業』
BSプレミアムにて 今夜23:45〜

ヘラクレスの冒険 (クリスティー文庫)

原作はアガサ・クリスティの『ヘラクレスの冒険』。
ベルギー人の名探偵エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot)のシリーズのひとつ。
ポワロのクリスチャン・ネーム「エルキュール」は、ギリシャの英雄「ヘラクレス」のフランス語読みなのだとか。
ヘラクレスが挑んだ12の冒険に因み、ポワロが解決していく12の事件をまとめた短篇集。

1時間半のドラマ化するにあたり、各短編の要素をちょっとずつ入れて、ひとつの話にした模様。

国際的な窃盗&殺人犯・マラスコーを逮捕するべく、包囲網の敷かれたホテル。
客の中には、以前マラスコーに苦い思いをさせられたポワロの姿もある。
ホテルの客も従業員も、みんな一癖ありそうな人物ばかり。
警察の覆面捜査官がひとり混じっているはずだが、それが誰かもわからない。
そんな中、雪崩で唯一の交通手段が遮断され、陸の孤島となったホテルでついに事件が・・・。

という感じらしいです。
わたしも初見なので、今夜の放映が待ち遠しい!

クリスティ作品もポワロのドラマも大好きですが、今夜の大きなお目当ては、出演者のひとりトム・ヴラシア。
ホテルにうごめく怪しい客のひとり、保険調査員の役として登場します。

独特な色気のある俳優さんなので、皆さまどうぞチェックしてみてくださいね!



posted by まさの at 09:03 | TrackBack(0) | 映画・ドラマ

2016年01月25日

『クレヨン王国のパトロール隊長』

クレヨン王国のパトロール隊長 (講談社青い鳥文庫)
『クレヨン王国のパトロール隊長』(福永令三:著 講談社)

(あのひとは、みんなが誉める、人気のあるひとだけど、わたしに対しては意地悪なんだよなあ)
(理由はわからないけれど、あのひとといるとわたしは、自分のいやな面ばかり見せてしまう)

そんな相手がいて、悩んだことのある方には、ぜひ読んでみて頂きたい本です。

主人公は小学5年生のノブオ。
反りの合わない先生から頭ごなしに叱りつけられ、かけ出していった山奥はクレヨン王国に通じていました。
王国のパトロール隊長に任命されたノブオ。
隊長の任務を通し、花たちのいざかいや、水の精と火の精との争いにあったかれは、みんなの心の痛みの中に、自分のもつ痛みに通じるものを見出していきます。

母親の死。父親が義理の母を迎えてからの微妙なすれ違い。義理の妹の交通事故、そして失明。
家庭が抱える事情に、いつも自責の念を覚えているノブオ。
かれにとって大きな慰めは、周囲を取り巻く豊かな自然への愛情と知識でした。
皮肉なことに、その自然への知識のためにかえって先生から疎まれるのですが、そんなノブオにだからこそ、自然の精霊に満ちた王国の扉は開かれたのでしょう。

わたし自身、ノブオにとっての先生のような相手が複数いる場所で、何年も過ごさなくてはならなかった経験があります。
自分が生まれつきしぶといので、その数年に耐えられた、と思っていました。
でも、先日ひさしぶりに『クレヨン王国のパトロール隊長』を再読し、ノブオと先生の関係や花野平のくだりを読んで、

ノブオやワレモコウの花がわたしより先に痛んでくれたから、
そして、その痛みを与えた相手もまた、そうすることで痛んでいるかもしれない、という考え方を教えてくれたから、
わたしにも「合わない」ことや「孤立」への耐性ができていたのかも。

と感じました。

読書は、心のワクチンの働きもしてくれるものだと思います。

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posted by まさの at 16:10 | TrackBack(0) |